自動運転・ADASを知る

ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems,
先進運転支援システム)の開発に関する基本情報

ADAS(先進運転支援システム)の開発にあたり、ACCを始めとしたADASの代表的な機能と、センサー、ECUといったADASを支える機器・技術について解説をします。

またADASの開発に有益な情報を得ることができるセミナーやニュース情報、ZMPのソリューションも併せてご紹介します。

1. ADASの具体的な機能の紹介

ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems,先進運転支援システム)とは、ドライバーの安全・快適を実現するために自動車自体が周囲の情報を把握し、ドライバーに的確に表示・警告を行ったり、ドライバーに代わって自動車を制御するなどの運転を支援する機能の総称です。

現在、いくつかの機能が車両に採用されてきておりますが、ADAS技術は車社会の将来を考えて、安全性と利便性を向上させるために開発されたシステムであり、様々な技術が開発されているなかで、機能の向上だけでなく普及も大きなカギとなっています。そのため、センサー選定や処理用チップの価格、搭載位置の選定など様々な要件を成立させる必要があるといえます。

また、自動運転の観点からは、SAE(米国自動車技術会)が定義づけている自動運転のレベル分類ではドライバーが運転タスクを実施するレベル2に位置付けられています。

本節では、ADASの代表的な機能である、ACC(Adaptive Cruise Control System:車間距離制御)システムなど、ADASを実現する用語とその具体的な機能、アプリケーション、OEM各社(トヨタ、日産、ホンダなど)で呼び方について下記にてご紹介します。

ADAS機能について、詳しくは「ADAS(Advanced Driver Assistance System:先進運転支援システム)機能の全て」をご覧ください。

1-1. ACC(Adaptive Cruise Control System:アダプティブクルーズコントロール)

ACCとは、外界センサからの情報にもとづいて、ECUが自動車のアクセルやブレーキを操作する機能です。前走車がいる場合は、一定の車間距離を保ちながら、追従走行することが出来ます。
また、前走車がいない場合は、ドライバが任意の速度を設定して走行します。クルーズコントロール、クルコンなどの略されることもあります。現在、量産車両のグレードが高い車両のオプションとしては多く搭載されているADASの代表的な機能です。

1-2. FCW(Forward Collision Warning:前方衝突警告)

FCWとは、センサーが想定する空間(距離)内に前走車を検知し、車間距離が近かったり、カメラで前の車が急ブレーキを踏むなどブレーキランプの点灯を認識するなど衝突の危険性が高まった場合に、ドライバーに警報や回避操作を促す機能です。
前方衝突警告は、ミリ波センサを使ったケースやステレオカメラを使った検出など、センサーも様々な種類を使うことが出来るため比較的採用されやすいADAS機能です。

1-3. AEBS(Advanced Emergency Braking System:衝突被害軽減制動制御装置)

AEBSとはCA(Collision Avoidance)とも呼ばれ、FCW(前方衝突警報)がドライバーに警告し衝突回避を促したにも関わらず、衝突が避けられないとシステムが判断した場合に、自動的にブレーキを動作させ、衝突時の被害を軽減させる機能です。
最近では、衝突時の衝撃を少なくするブレーキだけでなく、衝突時のドライバーへの衝撃(ダメージ)を軽減するため、座席での衝撃軽減対策も行われており、シートベルトの巻き込みやヘッドレストの構造変更なども行われています。

1-4. NV/PD(Night Vision/Pedestrian Detection:ナイトビジョン/歩行者検知)

ナイトビジョン/歩行者検知は赤外線カメラを使用して、夜間や霧が濃い場合などで、目視で確認が難しい時に、専用ディスプレイに熱源として表示します。歩行者検知については、ステレオカメラを活用した事例もあります。また、歩行者の検知についはミリ波と単眼カメラを組み合わせた方式もあります。

1-5. TSR(Traffic Sign Recognition:交通標識認識)

一時停止、進入禁止、制限速度などの交通標識をカメラが撮影した画像データから認識し、ドライバーに対して適切な交通規制情報を表示、警告を行います。一般的な表示方法として、単眼カメラで道路標識を認識し、適切なタイミングでメーター内に表示し、標識への注意を促します。認識技術の向上のため、各国の標識の走行データ検索や認識の正解データの収集が精度向上に重要な要素となっています。

1-6. LDW(Lane Departure Warning:車線逸脱警報)

道路上の車線を検知し、車両が車線の逸脱を予測するとドライバーに警告をする機能です。カメラで車線を認識し、ウインカーを出さずに車線を逸脱する挙動があると、ハンドルを振動させる、ディスプレイに表示をする、警報音を鳴らすなどの警告を行います。車線検出のイメージは下記を参照いただければと思います。
参照…Mono-Camera based Road Marking and Lane Detection

1-7. LKAS(Lane Keeping Assist System:車線逸脱防止支援システム)

上述のLDW(Lane Departure Warning)に加えて、パワーステアリングにトルクを発生させる操作支援を行います。ドライバーに警告するだけでなく、積極的に運転に関与するシステムがLKASとなります。LDW(車線逸脱警報)、LKAS(車線逸脱防止支援システム)は一般的に車速が上がった状態(ex.50km/h以上)などの状態で機能することが多いようです。

1-8. BSM(Blind Spot Monitoring:死角モニタリング)

自動車の死角は様々ありますが、本ADASの機能はレーンチェンジ時などの事故の原因となるような、ドライバーの死角になる側後方から接近する車両をカメラでモニターし、ドアミラーの鏡面部分や、ディスプレイに表示・報告する機能です。通知や報告の方法としては、アラート音を使った通知方式もあるようです。

1-9. RCTA(Rear Cross Traffic Alert:リヤクロストラフィックアラート)

本技術もドライバーが見えないエリア(死角となりやすい場所)を補助するための機能です。駐車場などの後方左右のエリアを超音波センサーなどで、自動車の後方を横切る人や自転車などを検知し、ドライバーに警告音などを発して注意を促す機能です。

1-10. DM(Driver Monitoring:ドライバーモニタリング)

運転中のドライバーの表情やステアリング操作などから、運転状況を把握し、運転に支障のある状態と判断した場合にディスプレイに警告表示をします。状況によっては自動車を自動停止させる場合もあります。ドライバーをカメラで撮影し、運転への集中度、居眠りなどを検知するシステムで、一般にカメラを使った顔の向きや目の開き具体を画像計測しています。

1-11. AFS (Adaptive Front lighting System:自動ヘッドランプ光軸調整)

自動ヘッドランプ光軸調整機能は昨今では、軽自動車に採用されるADAS機能となります。機能としては、夜間にカーブや交差点などに侵入する際に、ステアリングの向きに合わせてヘッドライトを照らす方向を自動的に調整する機能です。対向車や歩行者の存在を検知し、ハイビームとロービームを切り替える機能も含みます。

1-12 APA(Advanced Parking Assist:高度駐車アシスト)

従来より駐車を支援する機能に、リアモニタやバックソナーなどがありました。近年は、モニターにステアリングの舵角に応じた車両の進路を予測するラインをつけたり、縦列駐車時の切り返しのタイミングを音声で案内する機能や、区画線を検出し、車両の目標駐車位置を設定する機能、さらには駐車操作自体を自動車が行う機能が開発されています。また、ブレーキとアクセルの踏み間違いによる誤発進の抑制機能なども搭載されています。
ZMPの製品では、ADASの機能を開発するにあたりラボや研究室内で行えるラジコンカーサイズのロボットカーRoboCar 1/10を販売し、これまで300以上のユニットを販売してまいりました。実際に動くものを使って、ADAS技術の知識を深めることが可能な製品となっております。

2. ADASとAD(自動運転)の違いについて

ADAS(先進運転支援システム)とAD(自動運転)の一番大きな違いは、ドライバーがどこまで自動車の運転に関与するかという点にあります。ADASはドライバーが自動車を運転する際に、できるだけ事故を回避し、快適に目的地にたどり着くかを支援する機能を充実させる、という発想です。それに対して自動運転とは、もはやヒトの関与なしに自動車の判断で目的地にたどり着く、という発想です。
SAE(米国自動車技術会)は自動運転を自動化の程度をのレベルを下記の5段階に分けています。日本においてもこの分類を採用しています。

 レベル0:運転自動化無し
 レベル1:運転支援
 レベル2:部分運転自動化
 レベル3:条件付き運転自動化
 レベル4:高度運転自動化
 レベル5:完全運転自動化


レベル0〜2までは、基本的に運転タスクはドライバーが行いますが、レベル3以上は運転タスクを自動運転システム、すなわち自動車自体が判断するようになります。
ADASはドライバーが運転タスクの主体なので、自動運転レベル2に該当する運転支援機能の総称となります。

3. ADASの技術要素

ADAS(先進運転支援システム)の機能を実現するための技術には、外界の状況を把握するセンサー技術、得た情報に基づき車体の制御などを行う車載ECU、車載ECU同士を高速かつ正確に連携させる車載ネットワーク、自車位置を正確に特定する車載ローケータなど様々な要素があります。

ADASの技術要素についての概要は、「ADAS(Advanced Driver Assistance System:先進運転支援システム)を支える技術」をご覧ください。

3-1. 車載センシング

ADAS(先進運転支援システム)を実現するためには、車両周辺の移動物体、構造物、道路形状といった環境を認識しなければなりません。その外部の環境を認識するためのセンサを「外界センサ」と呼びます。

車両周辺の環境認識を正確に行うためには、現段階では1種類のセンサだけでは外界を把握しきれないこともあります。そこで様々な外界センサを組み合わせた、いわゆるセンサフュージョン技術の開発も進んでいます。

車載センシング技術について詳しくは「ADAS(先進運転支援システム)におけるセンサの種類と役割について」にて解説をしています。

3-1-1. ADAS用カメラ
ADASに用いられるカメラには、モニタリングとセンシング、2つの機能が求められます。モニタリング機能とは、主にドライバーへの死角情報など補完的な情報提供などが目的です。
センシング機能とは、例えば歩行者や交通標識など、カメラが撮影した画像から自動車の制御に必要な情報を取り出す機能です。取り出した情報を元にドライバーに注意を喚起したり、アクセル、ブレーキ、ハンドルなど、自動車を制御することもあります。

またカメラは単眼カメラとステレオカメラにも分類ができます。ステレオカメラとは人間の眼のように2つのレンズを持ち、より正確な距離測定が可能となります。 車載カメラについては「ADAS(先進運転支援システム)における車載カメラについて」にて詳しく説明をしています。

ZMPでは、ADAS・自動運転技術開発用にカメラモジュールやシステムを提供しております。
RoboVision2s
測距や物体検出ソフトに対応した超高感度ステレオカメラシステム
RoboVision3
最大150m、水平100°の距離と視野のセンシングが可能なステレオカメラ
Surround RoboVision
360°全周囲の画像を24bitの色深度で最大30fpsで取得
3-1-2. ADAS用レーダー
ADASにおいてレーダーとは主にミリ波レーダーを指します。ミリ波レーダーは、機器が発した電波の反射波を測定し、対象物体の位置と速度を検知します。カメラやレーザーレーダーとくらべると雨や霧、逆光などの影響をうけにくく、視界が悪い夜間や悪天候に強いという特徴があります。この特徴により歩行者や他の自動車を検知するセンサーとして活用されています。
3-3-3. ADAS用ライダー(LiDAR)
ライダー(LiDAR)とはLight Detection and Rangingを略したもので、レーザー画像検出と測距と訳されます。光を用いたリモートセンシング技術の1つです。ミリ波レーダーに比べて障害物など周囲の物体との距離測定を数センチ単位で行うことができます。車載用のLiDARについては各社で開発されており、ZMPでも3D-LiDARを開発用のセンサとして提供しております。
RoboSense 3D-LiDAR
16レイヤー、32レイヤーの2タイプ、水平画角360°の全周囲スキャンが可能なLiDAR

3-2. 車載ロケーター

ロケーターとは自車位置を正確に測定する機器です。これまではGPS衛星を元にカーナビゲーションなどで活用されていました。しかし様々なADAS機能を実現する際には、車線単位での自車位置の特定が求められます。そのためにジャイロセンサー、車速測定などを活用してより精度の高い現在位置を測定します。

3-3. 車載ECU

電子制御化が進む現代の自動車には、多くのECU(電子制御機ユニット)が搭載されています。大衆車でも数十個の、高級車では100個以上のECUが搭載されていると言われています。ADASにおけるECUは、外界センサーが取得したデータを元に、必要な情報を抽出し、ドライバーに注意喚起、警告を行ったり、ステアリングやアクセル、ブレーキなどを制御したりと、中心的な役割を果たします。

 ADASにおける車載ECUについては、「ADAS(先進運転支援システム)における車載ECUの役割と求められる性能」にて詳しく解説をしています。

3-4.車載ネットワーク

大量のECUが搭載されている自動車では、ECU同士の連携が重要になります。それぞれのECUが適切な通信を行うための代表的なプロトコルがCAN(Controller Area Network)です。他にEthernet、FlexRay、LIN、MOSTなどの規格があります。さらにインターネットとつながるコネクテッドカーとして、TCP/IPを通じた外界との通信もあります。

3-5. ADASにおけるHMIの位置付け

HMIとはヒューマン・マシン・インタフェースの略で、人と機械が情報をやり取りする為の必要な表示や操作などの総称です。
ADAS機能が搭載された自動車はカメラを始めとした多くのセンサが備わっています。それらのセンサは大量のデータを取得し、それらを元にECUが演算を行った結果をドライバに対して注意喚起、警告を行いますが、人が運転しながら認識できる情報量には限りがあります。そのため、自動車がドライバーに適切な形で情報を提供するための概念を総称してHMIといいます。運転支援を目的として、ドライバーに注意や警告を促すADASにおいてHMIの設計は重要な要素となります。

ADASにおけるHMI位置付けについては、「ADAS開発におけるHMI(ヒューマンマシンインタフェース)の位置付け」にて詳しく解説をしています。

3-6.今後ADASに期待される技術

ADAS、自動運転がさらに進化させるために、車車間通信システム、車路間通信システム、ダイナミックマップなどの技術が注目されています。

8. お問合わせ、資料請求

上記に関する問合せ、資料請求などについては下記よりご連絡いただければと思います。
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