ロボット技術が生み出した独自のマップ作成システム「RoboMap」

「ロボット用の高精度マップをより手軽に、そして…」

ロボットが自動で走行するには、3Dマップの情報とロボットに搭載されているセンサーから得られた情報を照合させることで、自分の現在の位置を把握する必要があります。このマップを作成するために、ZMPでは独自のマップ作成システムである「RoboMap(ロボマップ)」(以下RoboMap)を開発しています。一体RoboMapとはどんなものなのか。RoboMap担当のJさんに開発の経緯から使用例、さらには未来の展望まで詳しく聞いてきました。
 

①海外進出から生まれた独自のマッピング技術

編集部:

RoboMapとは簡単に言うとどのようなものですか?

Jさん:

RoboMapは精度の高い空間情報を提供する技術です。ロボットを自動で走行させるためには、まずマップを作成し、その中で走行可能なルートを設定し、そしてロボットのセンサーを使って自分の位置を推定するという手順があります。このロボット走行手順の中で重要になるマップ作成を、非常に手軽に、そして高精度に行うことができるZMP独自のシステムがこのRoboMapです。

ロボットを自動で走行させるまでの工程

編集部:

RoboMapはどのような経緯で開発されたのでしょうか?

Jさん:

私が入社した3年前は洗濯機を横に倒したような大きな台車型のマッピングツールを使っていました。

日本国内のプロジェクトならこれでも問題ありませんでしたが、海外のプロジェクトでは大きなハードウェアを丸ごと持っていく必要がありました。気温がマイナスになるような日本より寒い気候であり、この環境で大きな台車を手で押し、マップを作るのはとても大変でした。この経験から効率の良いマッピング方法を模索し始めました。

車やバイクにマップ作成ツールを載せて作る方法もありますが、ZMPのライフロボットが走行するような歩道や狭い道には適していません。そこで、自転車×バックパック型という方法を見つけ、RoboMapを開発することになりました。

編集部:

他社のマップ作成ツールとの違いはどこにありますか?

Jさん:

既存のマップデータの収集方法は大きく2種類あります。1つ目は、建築や林業、工業で使われる方法です。これは現場の山の形状や建物の構造を把握したりするために使用されるものです。三脚を立ててじっくりと情報を取得するため、狭い範囲のマップに強みがありますが、町全体のマップを作るような規模の場合は時間がかかってしまいます。

2つ目は、自動運転や地図作成企業が使うMMS(Mobile Mapping System)です。これは広い範囲の情報を素早く取るために、高精度のマッピング機器を搭載した車を走行させるという手法です。しかし、この方法だと道路やその付近のマップがメインとなり、公園や細い道のデータが取りにくいというデメリットがあります。これらの2つの方法のちょうど間に位置し、広い範囲だが細部も見落とさない高精度のマップを作成できることがRoboMapの強みとなります。

2つの方法のちょうど間に位置するRoboMap

②子供でも使える?手軽で高精度なRoboMap

編集部:

RoboMapでマップを作成するまでの手順を教えてください。

Jさん:

まず、バックパック型のハードウェアを使ったマップのレコーディングをします。実際に現場へ出向き、センサーやカメラからデータを収集します。この収集は、リモコンでテレビをつけるような子供でもできるくらい簡単な操作で行うことができます。

Jさん:

次に、集めたデータから点群マップの自動生成を行います。しかしこの段階では、マップを作る際に必要ない歩行者の情報や信号の位置のズレなどが発生していることがあります。そのため、生成された点群データを修正していく必要があります。そして、最終的には現実そっくりのマップに仕上げていきます。

完成した3Dマップイメージ

編集部:

マップのレコーディングの際に使うセンサーにはどのようなものがあるのでしょうか?

Jさん:

まずは「LiDAR」です。LiDARとは、レーザー光を照射し、それが物体に当たって跳ね返ってくるまでの時間から距離を測定するセンサーです。RoboMapでは機械的回転式LiDARを2つ採用しており、水平方向と垂直方向をそれぞれ360度見ることで、高い建物の形状も反映させることができます。次に「GPS」です。LiDARで得た距離情報に加え、位置情報を得るために使用します。RoboMapで使われているものはRTK(Real Time Kinematic)と呼ばれ、基地局を経由することにより誤差が数センチ以下の精度が高いものを利用しています。

LiDAR


LiDAR
LiDARとは Light Detection And Ranging(光による検知と測距)または、Laser Imaging Detection And Ranging(レーザー画像検出と測距)の略称です。主に目に見える光よりも波長が長い近赤外部分の光を脈打つよう(パルス状)に照射します。対象物に当たってから跳ね返ってくるまでの時間差や反射強度を測定することで、物体の距離や位置、道路と白線の違いなどを検出することができます。

Jさん:

さらに「IMU(Inertial Measurement Unit)」もあります。これは慣性センサーと呼ばれ、加速度や角度を計測することができ、スマホにも搭載されています。LiDARとGPSのみでその場のマップ情報は取得することができます。しかし、RoboMapでマップを取る際は、バックパックを背負って移動しているため、向きが変わってしまいます。正面から飛び出したレーザーが物体に跳ね返ってくる頃には正面ではなくなってしまうということです。そのズレを補正するために角度を測定できるIMUが活躍します。

IMUセンサー

IMU
IMUとは Inertial Measurement Unit(慣性計測装置)の略称です。基本的には、角速度センサーと加速度センサーで構成されています。角速度センサーはジャイロセンサーとも呼ばれ、ある点をまわる回転運動の速度である角速度から曲がった方向などを計測することができます。加速度センサーは、物体の移動速度が変化する時にのみ発生する力(慣性力)を検知し、移動距離や振動を計測することができます。また、これに地球のN極とS極から方角を計測する地磁気センサーを合わせたものもあります。

Jさん:

最後に「カメラ」です。LiDARを筆頭に様々なセンサーから得た情報を統合して、町全体の位置や距離がわかる3Dの点群データが出来上がります。そこに、カメラから得た画像の情報を付け足すことによって、まるでもう一つの現実世界のような精度の高いマップを提供することができます。

③開発者が語るRoboMapの未来とは?

編集部:

RoboMapの今後について教えてください。

Jさん:

今後はお客様が出前のように気軽にマップを作成できるサービスになることを目指し、使いやすさをさらに追求していきたいと思います。また、町を越え、地域全体の高精度マップを作成できるような広さを実現することも今後の開発方針となります。

さらに、現在RoboMapが作成しているマップは、ZMPのライフロボットの走行に関わる歩道や建物内といったエリアです。そして、ここは同時に人が普段生活する場所でもあります。

RoboMapは将来的に、ロボットのためのマップだけでなく、人々の生活を支えるマップ情報を提供するシステムとなることを目指しています。

編集部:

最後に、エンジニアとしてRoboMap開発の面白さを教えてください。

Jさん:

マップ技術を開発する前は、他社が持ってる技術を自社で開発するなんて意味ないのではないか?と考えてしまうかもしれません。しかし、実際やってみると他社に頼っていては実現できないところが多く、自分の技術を使って今まで出来なかったことを可能にするという経験はエンジニアとしてとても面白いです。

また、RoboMapが様々な分野に応用できるポテンシャルを持っていることも開発をしていて非常にわくわくするところです。例えば、渋谷のスクランブル交差点を忠実に再現した仮想世界を作ることを想像してください。従来の方法では、何人もの人がカメラやセンサーを使い信号が青の時間に何度も往復してデータを集めることになります。しかし、RoboMapを使えば1人がバックパックを背負い3分程度歩くだけで収集できます。

このようにRoboMapをロボットのためのマップだけでなく、手軽に高精度な空間を作り出すツールとして価値を生み出すことができる環境があること。そして、その空間データを使って人の生活を助けるようなサービスも生み出せるかもしれない可能性にわくわくできる環境があることが、エンジニアとしての面白さです。

エンジニアの開発風景

まとめ

RoboMapは自社でロボットを開発するZMPだからこそ生み出すことができたマップ作成システムでした。そして、今後はロボットのためだけでなく、様々なことに応用されていくかもしれない非常に可能性のある技術だということがわかりました。

RoboMapの詳しい情報やお問い合わせはこちらから!

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